【ジャムウとは】バリの自然派ウェルネス:受け継がれるジャムウの伝統とウタマスパイスの本物志向

バリはしばしば「神々の島」として知られ、その息をのむような景観や豊かな精神文化、そして自然との深いつながりで有名です。この楽園のような環境は、長年にわたりウェルネスを求める人々の聖地となり、伝統的な治癒法を受け入れる風土が育まれてきました。その中心にあるのが、インドネシアの古来からのハーブ医療「ジャムウ(Jamu)」で、バリでは独自の呼び名「ロロ(Loloh)」として知られています。単なる飲み物を超えたジャムウ/ロロは、バリの人々の日常生活に深く根付いた、長い歴史を持つ伝統です。ウブドを拠点とするバリ発のブランド「ウタマスパイス(Utama Spice)」は、島の豊かな植物文化にインスパイアされた製品を作り上げることで、このジャムウ/ロロの哲学と深く通じ合う姿勢を示しています。  


ジャムウの歴史

ジャムウの歴史は、1300年以上前のジャワの王宮にまで遡るとされています。王族の間で始まったハーブエリクサーの使用法は、伝統的な治癒者たちの手によって徐々に村々へと広まっていきました。これらの強力な調合のレシピは、主に家族内での口伝によって代々受け継がれてきました。ジャワ中部にある9世紀の寺院から出土した考古学的証拠によって、当時からすでにハーブを使った療法が準備・服用されていたことがうかがえます。その深遠な歴史と文化的意義が認められ、インドネシア政府はジャムウをユネスコの無形文化遺産リストに推薦しました。2019年にはインドネシアの文化遺産として正式に認定され、2023年にはユネスコによる承認も得ています。  

JAMU information

バリにおけるロロ(Loloh)の伝統

バリでは、この伝統が「ロロ」という形で継承されています。現地の言葉で「ハーブの調合」や「伝統的な薬」を意味するロロは、バリ社会の文化的布(タペストリー)に深く織り込まれ、日々の健康維持や予防的なアプローチの一環として利用されています。ジャワのジャムウと根本的な哲学を共有しつつも、ロロの処方にはバリ固有の植物が組み込まれることが多く、島独自の動植物や風習を反映しています。この伝統は、ハーブ医療だけでなく精神面やホリスティックな実践を融合するバリの包括的な治癒システム「ウサダ・バリ(Usadha Bali)」とも深く結びついています。ロロは単なる健康のための飲み物ではなく、家族の集まりや「ワルン(warung)」と呼ばれる地元の食堂でも楽しまれる、文化的表現の一部でもあります。 ロロは、バリの人々にとって自然との繋がりや古代からの癒しの知恵を象徴するものであり、ウサダ・バリの伝統的な治療師(バリアン)によって作られてきました。昔からバリに住んでいた日本人の方から聞いた話では各町にバリアンがいて症状に合わせて、長い葉っぱに書いた秘伝のレシピをもとにハーブをすりつぶし口の中で唾液と混ぜ塗ってくれていたと仰っていました。本当に独特な文化だと感じます。


ジャムウ/ロロのホリスティックアプローチ

ジャムウ/ロロの核心は、身体・精神・スピリチュアルな要素が相互に影響し合うというホリスティックな健康観に基づいています。最適な健康状態を保つには、身体の「熱」と「冷」のバランスをとることが重要だと考えられています。しばしば予防的な手段とみなされるジャムウ/ロロは、病気を治すことだけでなく免疫力を高め、健康を維持することを重視する点が特徴です。この考え方は、古代ジャワの「ジャンピ・ウソド(Djampi Oesodo)」という概念とも呼応します。ここで「ジャンピ(djampi)」は神聖な呪文や健康をもたらす治療法を指し、「ウソド(oesodo)」は体内のエネルギーバランスを整えることを意味します。  


ジャムウ/ロロの代表的な材料

ジャムウ/ロロの効果は、自然から得られる豊富な素材によって支えられています。バリのジャムウ(ロロ)では、根や樹皮、花、種、葉、スパイスなど多様な植物が使われます。中でも広く使われるのが「クンイット(ターメリック/Turmeric)」で、その強い抗炎症作用や消化促進効果が知られています。もう一つの代表的な素材は「ジャヘ(ジンジャー/Ginger)」で、消化機能をサポートし、免疫力を高め、炎症を抑える効果があります。「レンガス(ガランガル/Galangal)」は従来から筋肉痛を和らげ、抗菌作用があるとされてきました。また「アサム・ジャワ(タマリンド/Tamarind)」には消化促進と免疫機能を高める働きがあると考えられています。さらに、バリ固有の「チェムチェムの葉(Cemcem Leaves)」は、伝統的に消化を助け、デトックスを促すために用いられてきました。  

ハーブ/スパイス名(バリ語/英語)主要な伝統的効能
Kunyit(ターメリック/Turmeric)抗炎症、消化促進
Jahe(ジンジャー/Ginger)消化促進、免疫力向上、抗炎症
Lengkuas(ガランガル/Galangal)筋肉痛緩和、抗菌
Asam Jawa(タマリンド/Tamarind)消化促進、免疫力向上
Cemcem Leaves消化促進、デトックス

現代のバリにおけるジャムウ/ロロ

今日のバリでもジャムウ/ロロは日常生活の中で重要な位置を占めています。早朝には、伝統的な調合を販売する行商人の姿を見ることができます。西洋医療が進んだ現代においても、インドネシア政府はジャムウを合法的な医療行為として認め、そのための規定を整えています。都市部や高級レストランなどでもジャムウ/ロロを提供しようという動きが進み、伝統的なウェルネスへの関心の高まりを反映しています。ジャワでは「ジャムウ・ゲンドン(Jamu gendong)」と呼ばれる、バスケットにジャムウを入れて売り歩く行商人の姿が一般的に見られ、バリでは家族の集まりやローカルのワルンなどでロロを味わう習慣があります。観光客からの関心も高まり、カフェやスパで現代的にアレンジされたジャムウ/ロロが提供されるなど、この古来の伝統をより幅広い人々が体験できるようになっています。  


ロロの入手方法と多様性

ロロはバリの伝統市場で簡単に手に入れることができ、その作り方を学ぶワークショップも各地で開催されています。調合の形態は多岐にわたり、伝統的な飲み物だけでなく、オイルやスクラブ、マッサージ用のローションなどにも応用されるため、よりホリスティックなウェルネスアプローチを体現しています。  


ウタマスパイス(Utama Spice)の役割

バリの文化的中心地であるウブドに拠点を置く「ウタマスパイス」は、バリの伝統に根ざした自然派ウェルネスの魅力を伝える象徴的な存在です。1989年、Dayu SuciとMelanie Templerによって設立された同ブランドは、現代の化学物質を含む製品が増える中で危機に瀕していたバリのハーブ知識を守る、という共通のビジョンから始まりました。自分たちの家族が安心して使える安全な自然派製品を作りたいという思いが発端でしたが、やがてその活動は地域社会の支援や環境保護にも広がり、バリ伝統のレメディの原則にしっかりと基づいた企業理念を築き上げました。ウタマスパイスは、合成結合剤や人工着色料、防腐剤などの合成物質を一切使用しない、純粋で自然な原材料のみを使う方針を堅持しています。  


トリ・ヒタ・カラナ(Tri Hita Karana)の哲学

ウタマスパイスを導く哲学は、バリ文化の概念「トリ・ヒタ・カラナ(Tri Hita Karana)」に深く根ざしています。これは、人間同士・自然・神々の三つの調和を重視する考え方です。この哲学は、サステナビリティや倫理的な調達、そして地元農家への積極的な支援という形で具体的に実践されています。ウタマスパイスの製品開発の中心には、古来から伝わるバリのハーブ知識があり、伝統的な知恵を配合に生かすことが彼らの使命です。たとえば、Borneo産のククイやイリペバターの持続可能な収穫を支援する「Forestwise」との協力関係は、その取り組みの一例といえます。  


ジャムウ/ロロとのつながり

ウタマスパイスは、すべての製品を「ジャムウ」や「ロロ」の名で直接マーケティングしているわけではありません。しかし、ブランドの核となる哲学や原材料の選択からは、これらバリ伝統の実践と深い関係性が読み取れます。多くの製品には、ジャムウ/ロロの主要素材として知られる植物やスパイスが使われています。たとえば、抗炎症作用で知られるターメリックは、ボディバターやローション、フェイスセラムなどのラインナップに取り入れられている可能性が高いです。温めと活力を与える効果を持つジンジャーは、ボディバームやその他のボディケア製品に使われているでしょう。リフレッシュ効果や浄化作用で知られるレモングラスは、キャスチールソープやボディミスト、エッセンシャルオイルにも採用されています。またシナモンはリップバームなどの温感系処方に利用されていると考えられます。AYANA Farmでの「Jamu Bar」とのコラボレーションや、ウタマスパイスが同ファームで展開している取り組みは、ジャムウの原理や知識を活用していることを直接的に示すものです。さらにブランドのブログでも「インドネシア伝統ハーブの知識を解き明かす(Unlocking Indonesian Traditional Herbal Knowledge)」などのテーマを取り上げており、これらバリの伝統に対する深いコミットメントを伺えます。  

ウタマスパイスの製品カテゴリ例:製品名主な原材料ジャムウとの関連性
ボディバターLemongrass Ginger Delightレモングラス、ジンジャージャムウに多用される主要素材
ボディローションCoconut Lotion Island Spiceココナッツオイル、スパイススパイスはジャムウに欠かせない素材
エッセンシャルオイルEssential Oils花、葉、根、スパイスバリのジャムウ(ロロ)で使用
リップバームNatural Lip Balm Peppermintココナッツオイル、ペパーミントリーフココナッツオイルは一部ジャムウのベース
インセンスTemple Spice Incense花、樹皮、スパイススパイスや植物はジャムウの鍵素材

ウタマスパイスの真髄

ウタマスパイスのアプローチは、単に自然やオーガニック素材を使うだけにとどまりません。バリ伝統およびトリ・ヒタ・カラナの概念に根差したジャムウの哲学を深く理解し、それを実際の製品づくりに生かすことが、このブランドを他の自然派ウェルネスブランドと一線を画す大きな要因となっています。伝統的な知識の継承と地域社会への貢献に真剣に取り組む姿勢は、本物の倫理観を求める消費者の心を捉えています。ウタマスパイスの提供するものは単なるスキンケアではなく、バリの豊かな文化遺産と伝統的なウェルネスを体感できる、本物かつ豊かな体験そのものといえますね。  


ハーブの伝統とバリの文化を世界へ

バリの社会にとってジャムウ(ロロ)は、古くから歴史的・文化的に重要な伝統であり、島の自然環境と深く結びついたホリスティックな健康観を象徴しています。ウタマスパイスは、この古来のバリ伝統ハーブ医療の哲学や主要な材料を巧みに取り入れながら、自然とオーガニックにこだわった製品を提供するユニークな存在です。伝統的な知識の保護、倫理的な調達、そして「トリ・ヒタ・カラナ」の精神を実践するという取り組みにより、ウタマスパイスはバリの本物のウェルネス文化を世界に発信しています。同社の丁寧に作り込まれた製品を通じて、人々はバリの奥深い癒しの遺産と触れ合い、その豊かさを日々の生活に取り入れることができます。